訳 :堺屋七左衛門
この文章は Kevin Kelly による "A Whole Lot of Nothing" の日本語訳である。
膨大な無 A Whole Lot of Nothing

私は海から2キロメートルほどの所に住んでいる。今日は自転車に乗って海岸まで行って、そこで波が次々と砕ける様子を見ていた。私の住むパシフィカの海岸の様子はこんな感じである。波が押し寄せ、風が波を吹き飛ばして泡立たせ、太陽が波頭を透かして輝く。岩の上にすわってその様子を眺めていると、見えるものすべてが無形だという確信に圧倒された。それは実在するが固形物ではない。固い岩の上にすわって、足の下にザラザラした砂があり、海水が波として打ち寄せて、頬に風の力を感じ、知識として海洋が生物にとってどれだけ重要かを知っている。このすべてが明白で間違いようのない目印であるが、その本質においては、あらゆるものが無形で重さのない、情報に近い何かでできているとそのとき明らかに感じられた(そして今でもそうだ)。