著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門
この文章は Kevin Kelly による "Beyond the Uncanny Valley" の日本語訳である。
不気味の谷を越える Beyond the Uncanny Valley
昨夜、映画「タンタン」を見た(訳注:原文発表は2012年1月)。素晴らしいものだった。不気味の谷を越えて、ハイパーリアル(超現実感)に突入したのだと思う。
不気味の谷とは何か? ロボットやアニメーションを人間らしく見えるようにすると、あるところまでは、次第に親近感が強くなる。しかし、人間にかなり近づいてくると、わずかに残る差異のせいで、気味が悪いと感じることがある。それが「不気味の谷」の理論であり、映画「ポーラー・エクスプレス」の登場人物や、ピクサーの初期の短編映画の赤ん坊を見たときに、気味が悪いと感じる理由だと推測されている。その登場人物は、却下するには人間的すぎるし、受容できるほどには人間的でない。コンピューター・アーティストたちは、人工的な生物については、ずっと昔に、100%の現実感というテストに合格している。たとえば、映画「アバター」のナヴィ、映画「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムなど。そして今、人間についても(少なくとも私にとっては)、「タンタン」でそのテストに合格した。
石黒浩『ロボットとは何か』(講談社現代新書)より