著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門
この文章は Kevin Kelly による "The Technium Test" の日本語訳である。
テクニウムの判定基準 The Technium Test
私たちの小さな青い惑星の他にも、宇宙には千億個以上の銀河があって、それぞれに千億個の太陽があり、それぞれに数え切れないほどの居住可能な惑星がある。宇宙の中で、知覚のある生物が生息して独自の高度な技術を発展させている惑星を、何らかの方法で少なくとも1個、調査することができたとしよう。その惑星で、複雑な物体を発見した場合に、それが生物なのか、それとも創作物なのかを見分ける方法があるだろうか? ある特定の事例について、それが生まれながらの生命体なのか、それとも生命体によって作られた極めて高度な機械なのか、区別できるだろうか? どのような枠組みを使えば、「自然の」進化と、技術による進化とを識別することができるのか? その惑星の起源や最初の生活形を知らない場合に、その惑星における技術と生命体との差異について、何か特別な熱力学的または情報的な手がかりがあるのだろうか? 私としては、そのような判定基準は存在しないと思っている。
さて、ここでカメラを切り替えて、銀河系間探査宇宙船から地球を見てみよう。地球上で自然の生物がどのような体系になっているかを知らないと仮定して、何が生物であるか、そして何が技術の産物であるかを識別できるだろうか? 熱力学や複雑度によって、あるいは情報の流れによって、「これは知能の力によらずに進化した」とか「これは知能によって発明された」とわかるような万能の判定基準があるのか? さらに、自己進化したものと、知能が作ったシステムが進化したもの、すなわち人工的な進化との区別がつくのか? たとえば、DNA類似の代替分子に基づいて、自己進化する新しい生命体システムを作ったとしたらどうか。探査宇宙船から今の地球を見ると、小規模なものであれば、自己進化したものと、知能が作ったものとは複雑度の差がはっきりしているだろう。しかし、人類最大の創作物であるインターネットについては、どうだろうか? そして100年後には? 「自然の」生命体と「人工の」生命体には、基本的に物理的な違いはなさそうに思う。両者を区別する方法は、その来歴を調べるしかないだろう。
ある種の製造物にはなくて、生物については物理的に検知できる生気というようなものはない。このような生物と人工物との連続性は、現時点では明確ではないし、あまり重要ではない。しかし、将来には、より重要で有益になり、また厄介なものにもなるだろう。
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