2008年09月30日

「注目が流れるところにお金はついて来る」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Where Attention Flows, Money Follows" の日本語訳である。



注目が流れるところにお金はついて来る  Where Attention Flows, Money Follows


新しい経済の新しい法則を要約すると、こういうことになる。

注目が流れているところに、お金はついて来るものだ。

注目以外のものはほとんど何でも、コモディティー化する可能性がある。ぜいたく品がぜいたくであるのは一時的なことでしかない。それはすぐに偽造され、コモディティー化する。高級ブランドは、過剰なほどの注目を獲得しているから高級であるにすぎない。

流入してくる注目を維持し続けていれば、お金がその後について来る。

知っておくべきことは、実はこれだけである。ありがたいことに、注目を獲得し維持する方法は無数にある。

いつも驚かせることをするのもよい。あざやかで奇抜。激しく役に立つ。魅力的に風変わり。きわだって頼りになる。素晴らしく正直。などなど。

しかし、注目をお金に換えるなんて、恥知らずな自己宣伝者がすること、あるいは有名人がすることではないのか?そのとおり。でも、それはグーグルがしていることでもある。バイオベンチャーのジェネンテックや、無愛想な製造会社たとえばスリーエムだって、そうしている。こういった会社は有用な製品やサービスを提供する。しかし競合他社も同じだ。私たちみんなも。

テクニウム(訳注:文明としての技術。ケヴィン・ケリーの造語)は、製品やサービスを全世界規模で、そしてすごい勢いで、どんどん吐き出すようにできている。何かを発明することも、そしてそれをクリックして入手できるようにすることも、ますます容易になっている。大型店舗が至る所にできて、便利そうな道具であふれている。ワールドワイドウェブ(WWW)は便利そうなサイトであふれている。この便利さの潮流の中では、製品やサービスは背景にある雑音になってしまった。つねに私たちに吹きつけている風のようなものである。この「有用性」という圧力は、まず避けることができない。各種の小さな召使いロボットが無数に作られて、そのすべてが私たちの援助をしようとする人工的世界を想像して欲しい。私たちはそこへ向かう途中にいる。

この世界で、良いものを全部手に入れることはどうしても不可能である。私たちが聞くことができる音楽以外にも、良い音楽は数多くある。たとえ映画を見ることが本職であったとしても、生涯のうちに見ることができる映画以外にも、良い映画は数多くある。時間をかけて使い方を習得している道具以外にも、便利な道具は数多くある。私たちが注目するウェブサイト以外にも、素敵なウェブサイトは数多くある。ゴミくずや大量生産のヒット作品、そしてとても好評な作品でも個人的に意味のないものは、すべて忘れてしまおう。そのかわりに、自分の心に波風を立てるものだけに集中しよう。それでも多すぎるくらいのものがある! つまり、まさにあなたのための、あなた独自の好みに合った、すばらしいバンドや本や道具が、多すぎて受け入れられないほど存在しているのだ。

新しいものが何の役にも立たなければ、すぐにシステムから取り除かれる。しかし役に立ち有益であるだけでは、もはや成功するのに十分ではない。良いもの、役に立つものであることは、今では最低の基準にすぎない。すばらしいものであることが最低基準だという議論もありうるだろう。長く存続するものは、私たちの注目を集め続けなければならない。

そして、注目を獲得することができれば、その後にお金がついて来る。お金は注目を認識する方法の一つである。私たちは何かを「欲しい」と思う。それは注目の強い形であり、この注目を実現するためにお金を使う。製品やサービスを利用するのは、その注目の継続である。他人に勧めるのは、その注目のさらなる拡張である。


images-1-5.jpgimages-1-5.jpgimages-1-5.jpg


さあ、私はいくらかの注目を集めた。お金はどこにある?

お金は直接にも来るし、今日では、間接的に来ることも多い。たとえば広告主からの支払は、注目に続いて来るお金の、よくある間接的な経路である。

無料は注目の流れを獲得する良い方法である。クリス・アンダーソンによる、4種類の無料に関する賢明な解説では、無料の製品やサービスがあると、無料は必ず注目と交換される。生産者へ戻る注目の流れがなければ、無料には意味がない。顧客からの注目が無効であるならば、生産者は無料の物を森に捨てているようなものである。

無料の注目がお金に変わる方法は、別に新しいものではない。標準的な現金での購入のほかに、予約申込、クラブ会員制、フリーミアム(訳注:フリーとプレミアムの合成語)、ばら売り、割引、その他ありとあらゆる販売促進方法がある。「無料より優れたもの」 (Better Than Free) で私が示したように、無料で得られる注目からお金を生み出す方法はたくさん存在する。

注目とお金の間の緊密な結びつきは、信頼できて確実なものである。そこに気がつくことが重要である。グーグルが何億ものお金を得たのは、人々が欲しいと思うサービス(最低限と仮定されるもの)を提供することに加えて、遅かれ早かれ(そしてそれはたぶん遅い方でなくて早い方)注目が流れるところに、お金がついて来るということが分かっていたからである。彼らは少し良い性能と大いに良いデザインを提供し、絶えず注目されるようになった。最初のうちは、彼らはお金の流れがあることに気がついただけで、どのようにお金が流れるかまでは、詳しくわからなかっただろう。フェースブック、マイスペース、ネットフリックス、アマゾン、アイチューン、その他何千もの新規事業が同じ原理で動いている。まさに今、読者の注目は、新聞や雑誌からブログに移っている。私たちは確信を持って、この変化の後にお金がついて来るだろうと言える。富はすでに印刷から画面へ動き始めた。そしてメディアの世界は、この注目の流れに向かって引き続き傾いていくだろう。

一瞬の注目を得るだけでは間抜けだ。重要な課題は、良くて便利な同様のものが無数にある環境で、注目の流れを維持していくことである。音楽バンドにとっての問題は、「発見」されることではなく、関心を持たれ続けることだ。ウェブサイトにとっての課題は、スラッシュドットで紹介されることではなく、誰かに何度も繰り返し読みにきてもらうことだ。発明家にとって重要なのは、誰かにその装置を買ってもらうことではなく(それは単なるお金だ!)、それを毎日使ってもらうことである。気づいてもらえること、考えてもらえること、愛してもらえること、大切だと思ってもらえることが重要なのだ。

小規模な市場で新しいアイデアを設計している先駆者へのメッセージを送る。:信念を持て。注目の流れるところに、お金がついて来る。





Creative Commons License

この作品は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
posted by 七左衛門 at 22:02 | Comment(1) | TrackBack(0) | 翻訳    
この記事へのコメント
本当にありがとうございます。

最高の思考フレームワークを手に入れたようです。

株式にしろ、アフィリエイトにしろ、広告にしろ、最終的には全て注目されるところにお金が流れますよね。

深い原理原則ですね
Posted by 注目経済 at 2009年06月23日 00:00
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/20298458
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック