2009年04月08日

「知識の相関図」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Maps of Knowledge" の日本語訳である。



知識の相関図  Maps of Knowledge

現代科学の諸分野の相関図は、従来は学術論文相互間の引用状況に基づいて作成されていた。引用というのは、同じ研究主題あるいは関連した主題に関する以前の論文を参照する補足情報である。引用は投稿論文のリンク(つながり)と等価である。それによって出典の情報源に到達できる。引用の数はこのようなリンクを主題ごとに分類した集計結果を示している。相関図作成ソフトウェアを使って、リンクの状況を表示することができる。その一例を示す。

Structure of Science.jpg
リンクによる相関図

このような科学内部の相互関係を表現する新しい方法に関する研究が最近公表された。つながりを図示するかわりに、この新手法ではクリックを図示するのである。相関図作成プログラムは、オンライン版の学術論文誌(論文を入手するための、いま最も一般的な方法である)のサーバー通信記録を読み取って、研究者がある論文から次の論文へとクリックして飛び移る状況を取得する。そのクリックによるページ遷移(この研究の場合には10億回分)を図示することにより、利用者が作り出した関連を分類する。著者による最新の科学的知識の相関図を示す。

MapofScience.jpg
クリックによる相関図
(Bollen, J. et al. (2009), "Clickstream Data Yields High-Resolution Maps of Science," PLoS ONE)

この論文の著者によれば、引用方式に比べた場合のページ遷移方式の利点は、 リアルタイムに表示できること、および対象範囲が広いことである。「記録されているクリック回数は、今では、既存の全引用数をはるかに上回っている。」と著者は述べている。

グーグルおよび検索エンジン全般の将来について私は考えている。ウェブに関しては、クリックの数がリンクの数を上回っているのは明らかである。すなわち、人々がリンクを生成するよりも、クリックするほうが多いということだ。しかし私の知る限りでは、「ページランク」や他の検索順位アルゴリズムは、基本的にはリンクを重視して計算している。でもその他に、サイトをクリックする大勢の人の知恵も取り入れるほうが賢明ではないのか?リンクの状況だけでなく、ページ遷移も抽出したらどうか?グーグルはこれをすでに実施しているのだろうか?今では多くのサイトがグーグル・アドセンスを(それにグーグル・アナリティクスも)使っているので、あるページが何回クリックされたか、どこからそのページに飛んで来たか、などをグーグルは知っている。「ページランク」の順位に、クリックは関与しているのだろうか?

私の質問に対してグーグルの副社長から回答をもらった。「検索の品質はページランクと“情報検索スコア”の組合せに基づいています。クリックは(利用者の関心を示すその他の指標も含めて)“情報検索スコア”に影響します。」

要するに「そのとおり」だった。グーグルは知識の相関図を作成するにあたって、クリックによるページ遷移を考慮している。

クリックの回数はリンクの数を上回って増加し続けるだろう。だから私は、ウェブの構造は今後ますます、リンクよりもクリックによって決まるようになると思っている。





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posted by 七左衛門 at 21:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 翻訳    
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