2009年04月15日

「技術を衰退させるべき理由」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Reasons to Diminish Technology" の日本語訳である。



技術を衰退させるべき理由  Reasons to Diminish Technology

私は、人間の道義的責任として、技術の能力や存在感を増大させるべきだと確信している。しかし、控え目に言うと、あらゆる人がそう考えるわけではない。多くの人はその逆、すなわち技術の能力や存在感を減少させる道義的責任があると考えている。私はこの問題に関する論拠を収集して、十分に理解しておきたいと思っている。そしてこの議論にできるだけうまく立ち向かえるようにするのだ。技術を衰退させるべきだという正当な理由だけでなく、根拠のない理由にも興味がある。テクニウム(文明としての技術)に関するみんなの考え方、正しくないかもしれないがみんなをそう思わせる理由だ。とりあえずのまとめを以下に示しておく。私が気づいていない理由が他にあれば、コメントで教えてほしい。

技術に反対する論拠は基本的に四つあると思う。その他、派生的な理由もいろいろある。要するに、できるだけ技術を衰退させなければならないという理由は、技術は自然に反する、人間性に反する、技術それ自身に反する、そして最後に、技術は一種の邪悪なものであり、神に反するということである。

自然に反する:
技術は自然の対極にある。技術は自然を犠牲にして生み出される。技術は生態系の居住環境を破壊する。鉄は地球から採掘される。材木は森を伐採して得られる。レアメタル(希少金属)は地中から掘り出される。プラスチックは石油から作られ、空気中で燃やされる。工場は湿地や草原を舗装して敷地にする。さらに悪いことに、このような自然環境の破壊は、生物の種を絶滅させる場合もある。それは(少なくとも今のところは)取り返しがつかない行為である。もし仮に、技術による自然環境破壊を止めたとしても、人間が大量のエネルギーを消費するという事実があり、それは大気を破壊し気候の変化をもたらす。技術の規模はとても大きいので、どんなに環境に無害のように見えても、技術全体では自然の循環を圧倒的に上回る。

人間性に反する:
技術は人間の性格をむしばむ。技術は人間を自然から遠ざけ、人間本来の姿を減退させる。自然から離れた人間は、身勝手で愚かな振る舞いをする。自然の恩恵を受け取るのでなく消費する人になる。不自然で人工的になる。極端な場合には機械のように行動する。技術は人間を貪欲、不幸、性急、無神経にし、さらに、ひどく傲慢にする。

技術それ自身に反する:
技術は非常に速く進歩するので、自己破壊的になる。もはや自然にも人間にも、そして技術それ自身にも制御することができなくなっている。自己増殖的技術、たとえばロボット工学、ナノテクノロジー、遺伝子工学などは自ら加速的に進歩するので、予測不能かつ管理不能な方向に道を外れるおそれが常にある。「フェルミの逆説」が示唆しているのは、技術の自己破壊能力から逃れられる文明は、皆無あるいはごくわずかだということである。

神に反する:
技術は邪悪な力としての特徴をすべて備えている。人間や人類にとって最悪の損害は、技術のせいで発生したものである。原子爆弾、至る所にある銃、水に含まれる有毒物質、向精神薬、ダムの決壊、市販されている爆弾、永続的な放射性物質、自動車の衝突。そのほか戦争のための技術の数々……戦車、無人偵察機、地雷など。これらはたった一つの目的のために設計されたものだ。すなわち、できるだけ多くの人間を殺すためである。技術は暴力を拡大する。この暴力は計画的であって、技術による計略の一部であり、この体系に組み込まれたものである。邪悪な力の同類として。

他に何か書き漏らしたものがあるだろうか?





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posted by 七左衛門 at 21:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 翻訳    
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