著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門
この文章は Kevin Kelly による "We, the Domesticated Cyborg" の日本語訳である。
飼い馴らされたサイボーグ We, the Domesticated Cyborg
静かなるバビロン(Quiet Babylon)というサイトを運営するティム・マリーは、サイボーグの概念が生まれて50年になるのを記念して(初出は1960年)、多数の著述家に随筆を依頼している。私は自分の新しい著書の一節を改作して、短い文章を寄稿した。サイボーグに関する50の投稿の一番手としてティムが掲載した拙文の一部を以下に示す。
人間と発明品とを強く結合するのは目新しいことではない。一部が生物的で一部が人工的であるような存在がサイボーグだとすれば、私たち人間は当初からサイボーグであり、今でもそうだ。私たちの祖先は、250万年前に初めて石の削器を作って、爪の代わりを得た。約25万年前までに、火を使う大雑把な調理の方法を考案して、食物を消化しやすくなった。調理は、体外にある補助的な胃の役割をする。人間がこの人工的な臓器を手に入れると、進化のおかげで歯は小さく、あごの筋肉も小さくなり、また、食べられる物の種類が増加した。人間による発明が人間を変えたのだ。
今の私たちはアフリカから旅立った人類と同じではない。人間の遺伝子は人間による発明とともに共進化してきた。過去1万年の間だけでも、実際のところ、人間の遺伝子はその前の6百万年の平均よりも100倍速く進化している。これは驚くほどのことではない。いろいろな種類の犬は、人間が狼を飼い馴らした結果であるし、さらに、牛、とうもろこし、その他いろいろなものについても、何か明らかでない祖先から飼い馴らした。それと同じように、人間もまた飼い馴らされてきたのである。
明らかに、人間は自分で作ったものである。私たち人間は最初の技術的産物である。人間は、ある部分では発明者であり、ある部分では発明品でもある。人間はその知能を使って自分自身を作ったのだから、私たち人間は最初のサイボーグである。人間は自分自身を発明した。そしてその発明はまだ終わっていない。
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