訳 :堺屋七左衛門
この文章は Kevin Kelly による "Free Kindle This November" の日本語訳である。
今年11月にはキンドルが無料に? Free Kindle This November
2009年10月、ジョン・ウォーケンバックは、キンドルの価格が一定の割合で低下し、ほぼ規則的に安くなっていることに気がついた。2010年6月までその割合は不動であったので、ジョンはキンドルが無料になる日付を容易に予測できた。それは2011年11月である。
それ以来、私はこの予測をあらゆる人々に話してきた。2010年8月には、この話をアマゾンの最高経営責任者ジェフ・ベゾスに指摘する機会があった。ジェフはただ微笑して、「おや、気がつきましたか!」と言った。そして、もう一度微笑した。
出版業界の古参の人たちにその話をすると、たいていは神経質に笑う。けしからん!と言う。それを作るのに原価がかかる。アマゾンが無料のキンドルをセット販売して、しかもお金を儲けるという仕掛けが判明しつつある。私の考えでは、それは携帯電話方式だ。電子書籍を何点か買うと無料のキンドルがついてくる。
しかし、先週(訳注:本文末尾の追記参照)、テッククランチ(TechCrunch)のマイケル・アーリントンが、もっと気の利いた企画の噂について記事を書いている。アマゾン・プライムの利用者にキンドルを1台ずつ無料で提供するというものだ。年79ドルを払ってアマゾン・プライムの利用者になると(訳注:米国の場合)、無料で2日以内に商品が配送される。さらに先週からは、無料で無制限に動画ストリーミングを視聴することができるようになった(ネットフリックスみたいに)。アーリントンは次のように書いている。
1月に、アマゾンは一部の顧客に対して、ある意味で無料のキンドルを提供した。代金を支払う必要があるのだが、気に入らなければ全額返金を受けて、しかもその機器が手許に残る。それはさらに野心的な計画の予行であることが判明した。信頼できる筋によれば、アマゾン・プライムの利用者に対して、アマゾンは1台ずつ無料でキンドルを渡そうとしているらしい。
本当にアマゾンがそんなことを計画しているかどうかわからないが、たぶんそうなのだろう。それは、最高の顧客満足を達成するというジェフ・ベゾスの長期的戦略に見事に貢献する。年80ドル払って、無料のキンドル、無料の動画、無料の2日以内配送、これ以上の満足がありうるだろうか? 過去は未来の出来事の前兆であるとすれば、今年の秋、クリスマスの時期に間に合うように、キンドルが無料同然になると予想できる。実にすばらしい!
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追記:私はテッククランチに書いてある期日を読み違えていた。アーリントンの予測は2010年2月のものであり、先週ではなく1年前だった。ただし、内容はそのまま有効である。
また、フィル・ガイフォードのコメントで、無料キンドルという推測について、ロンドン・レビュー・オブ・ブックスの記事からの興味深い引用がある。
「控えめに見積ったとして、ニューヨーク・タイムズが紙による新聞の印刷をやめれば、その金額で各購読者にキンドルを無料で配れることになる。ごく普通のキンドルでなく、無料で世界中のデータを利用できるキンドルだ。キンドル1台だけでなく4台だ。1回限りでなく毎年だ。しかも、それは印刷費用を控えめに見積もった場合の話である。」
(John Lanchester, Let Us Pay, London Review of Books
http://www.lrb.co.uk/v32/n24/john-lanchester/let-us-payから引用翻訳)
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