訳 :堺屋七左衛門
この文章は Kevin Kelly による "Plateau of Progress" の日本語訳である。
停滞する進歩 Plateau of Progress

このスライドは、ヴァージン・ギャラクティック社のCEO(最高経営責任者)ジョージ・ホワイトサイズの講演で使われたもので、人間の乗り物の最高速度を対数目盛で示したグラフである。過去数世紀の間、その最高速度は、カーツワイル的な増加率で着実に増大してきた(訳注:米国の発明家レイ・カーツワイルは、技術が指数関数的に進歩すると主張している)。しかし、最近の数十年では、人間の乗り物の最高速度(宇宙ロケットが時速14,000マイル)は、横ばいになっている。しかし、ホワイトサイズの説明によれば、速度が十倍の割合で増加し続けると(計算機のように!)、2060年には光の速度に到達する(グラフ右端の赤い縦線)。そうなれば、恒星間旅行が可能になる(そして、ヴァージン・ギャラクティック社が喜ぶ!)。
それはありえない。最近開催された「100年宇宙船研究」会議で、ホワイトサイズはこの講演をしたのだが(訳注:原文発表は2011年10月)、その会議では、人間の移動速度を十倍の割合で増加させるための方法が仮説として多数提案されている。その案の弱点は、グラフを見ればわかる。すべての対数グラフが、延び続けているわけではない。速度に進歩があることは確実だろうが、その進歩する速度は、確実ではない。
私たちが経験してきたカーツワイル的なグラフの大部分は、情報に関する技術である。エネルギーに関する技術、たとえば、運輸、太陽エネルギー、電池などについては、情報と同程度の速度で倍々に増加することは、一般的に言って起こっていない。
今世紀中に光速に到達することはない、と私は断言する。しかし、私よりもずっと創造力が豊かで、怖い物知らずの人が現れて、私がバカだと証明してもらいたいとも思っている。
この作品は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。