2013年09月04日

「2019年の“想定外”を考える」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "2019 Unthinkables" の日本語訳である。



2019年の“想定外”を考える 2019 Unthinkables

未来学者のハーマン・カーンは、想像力を柔軟にして未来予測をするために、「想定外のことを考える」という方法を取り入れた。みんなが知っていることは正しい、という社会通念がある。それが邪魔をして、たいていの場合、未来をうまく予測することができない。たとえば、素人が百科事典を書いて、その内容をいつでも誰でも変更できるという発想は、ありえないばかげたことだと(私を含めて)みんなが思っていた。そのせいで、ウィキペディアの出現を誰も予測できなかった。私たちが知っていることは間違っていて、想定外のことが起こるかもしれないと考えるべきだ、とハーマン・カーンは強く主張している。

1993年に、ブライアン・イーノと私は、「想定外のこと」をいくつも電子メールでやりとりして、それを雑誌「ホール・アース・レビュー」に掲載した。以下に私の意見の例を示す。

バーベキュー非合法化 ― 発ガン性物質を多く含むので、バーベキュー調理した食品、火で焦がした食品、さらにはバーベキュー用品も販売できなくなる。バーベキューは(街では見られなくなるが)、こっそりと実施するのが流行する。

使途指定税金 ― ソフトウェアの進歩により、税金の一部について、納税者の裁量で使途を指定できるようになる。山田太郎氏は、自分の納税額のXパーセントをあるサービスに使うように指定する。それ以外の使用を認めない。これは第二の投票のようなものであり、政治家は熱心に注視する。

計算機の画面(CRTも薄型画面も)が健康に有害だと判明する。計算機を使う仕事は、有害作業だと考えられるようになる。


ブライアン・イーノの意見をいくつか示す。

大金持ちは、誕生日やクリスマスの贈り物として、自分の子供に小さな会社をプレゼントする。

下着製造業者は、男のボールのサイズが非対称であることをついに理解する。


それ以外の予想はここに掲載されている。

1999年10月に、私は、グローバル・ビジネス・ネットワーク社(Global Business Network)の依頼を受けて、20年後の2019年までに起こるかもしれない「想定外のこと」をいくつか考えた。最近、このときの提案を見つけた。それから12年経った現時点では、どれも起こりそうにないが(訳注:原文発表は2011年6月)、これからの8年で驚くべき展開があるかもしれないので、ここに示しておく。

2019年までに……

北米原産類人猿について、反論の余地のない生物学的証拠、すなわち、わずかな体毛と血液が発見される。DNA鑑定によって、地元ではビッグフットと呼ばれている、昔の幻の大型類人猿の存在が証明される。この発見によって、未確認動物学に多くの資金と人材が投入され、その2年後には、この動物との遭遇が科学的に確認される。

アマゾンは、巨大な実店舗の第一号店を開設する。7千5百万人の顧客を満足させるためである。

米国で一夫多妻が法的に認められる。

中国の出生率が人口置換水準を下回る。政府の施策にもかかわらず、中国のカップルが生む子供は1.5人以上にならない。中国は、その巨大な経済を維持するため、初めて移民の入国を奨励する。

疲弊したロシアで、ニューエイジ・テクノカルトが爆発的に広まる。その信仰は多岐にわたっていて熱狂的であり、国政に相当の影響力を持つようになる。その結果として、カリフォルニアのニューエイジ・カルトは生ぬるく見えるし、日曜学校はまともに見えるようになる。

環境保護主義が、保守的なキリスト教右派に受け入れられる。


今の調子で進むと、全部はずれそうな気がする。





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posted by 七左衛門 at 22:26 | 翻訳