2020年05月19日

「68個のお節介な助言」

著者 ケヴィン・ケリー Kevin Kelly
訳  堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "68 Bits of Unsolicited Advice" の日本語訳である。



68個のお節介な助言

今日は私の68歳の誕生日である。ロッキングチェアに座りながら、若者に助言したい気分になっている。私からの誕生日プレゼントとして、諸君に68個の短いお節介な助言を進呈する。

(訳注:この文章は2020年4月28日に発表された。フェイスブックでのケヴィン・ケリーの記述によれば、実際の誕生日は4月30日である。)

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posted by 七左衛門 at 17:30 | 翻訳    

2017年02月20日

千人の忠実なファン(改訂版)

著者 ケヴィン・ケリー Kevin Kelly
訳  堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "1,000 True Fans" の日本語訳である。



千人の忠実なファン(改訂版)

これは、私が2008年に書いたエッセイを編集し、改訂したものである。今ではよく知られたこの考え方も、当時は萌芽期で不十分であった。アイデアの本質を理解しやすくなるように書き直し、時代遅れになったものを削除した。この考え方は、ものを作る人、あるいは何かを始めようとする人にとって有益だと思う。より長い原文を読みたければ、この改訂版の後に掲載している。− ケヴィン・ケリー
(訳注:ケヴィン・ケリーのサイトでは、改訂版の後に元の文章が続いているが、当サイトでは、改訂版と原文を別ページに掲載する。原文の翻訳はこちら。→「千人の忠実なファン」

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創作者として成功するために、百万は必要ではない。百万ドルのお金、百万人の購入者、百万人の顧客、あるいは百万人のファンは必要ではない。工芸家、写真家、音楽家、デザイナー、作家、アニメ作家、アプリ作者、起業家、または発明家として生計を立てるには、千人程度の忠実なファンがいるだけでよい。

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posted by 七左衛門 at 20:49 | 翻訳    

2015年04月06日

「私はスーパー人工知能を不安に思わない」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Why I Don’t Worry About a Super AI" の日本語訳である。



私はスーパー人工知能を不安に思わない Why I Don’t Worry About a Super AI

[この文章は、ジャロン・ラニアーがエッジに投稿した記事に対する私のコメントである。]


私がスーパー人工知能を不安に思わない理由

新しい技術については、それが及ぼす影響に基づいて考えるのが賢明である。ジャロン・ラニアーやその他の、人工知能(AI)に警鐘を鳴らす人たちの善意は、私も理解している。しかし、AIという難問に対する彼らの思考方法は、不安に依存しすぎていて、今までに得られた事実に基づいていない。私は4項目の反対意見を提示したい。

1.AIの進歩は指数関数的ではない。

2.AIの性能に満足できなければ、人間がAIのプログラムを作り直せばよい。

3.AIが自分自身でプログラムを作り直すのは、多くのシナリオの中で最も可能性が低い。

4.不安をあおるのでなく、良い機会だと考えたい。

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posted by 七左衛門 at 22:10 | 翻訳    

2015年02月02日

「エイリアン・インテリジェンス」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "AI, or Alien Intelligence" の日本語訳である。



エイリアン・インテリジェンス AI, or Alien Intelligence

2015年、ジョン・ブロックマンによる今年の質問は、「考える機械についてどう思いますか?」だった。これに対して、私は「人工的エイリアンと言えるかもしれない」と回答した。私の回答全文を以下に再掲する。

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考える機械を作るときに最も重要なのは、その考える方法が人間とは異なるということである。

進化の歴史における偶然によって、人間は地球上で唯一の知能を持つ生物種として暮らしている。そのせいで人間の知能は特異だと考えがちだが、それは正しくない。人間の知能は特異ではない。人間の知能は知能の集合体であるが、それは宇宙に存在しうる多様な知能や意識の中では、ごくわずかな片隅を占めているにすぎない。既知の他の知性と比べて、より多くの種類の問題を解決できるので、人間はその知能を「汎用的」と呼びたがる。しかし、人工の知性が次々と作られるにつれて、人間の思考は少しも汎用的でないことに気がつく。それは多様な思考の中の一つに過ぎない。

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posted by 七左衛門 at 21:41 | 翻訳    

2014年12月27日

「インフォメーション」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Information" の日本語訳である。



インフォメーション The Information

今月のワイアード誌で、私はジェイムズ・グリックと対談して、グリックの新刊について話を聞いた(訳注:原文発表は2011年3月)。まず、その記事の抜粋を示す。その後に、未公開対談の一部を掲載する。

情報はあらゆる所を流れている。電線や遺伝子を通じて、また、脳細胞やクオークを通じて流れている。今ではどこにでも存在するように思われているが、つい最近まで、情報とは何か、あるいは、情報がどのような役割をするか、私たちは全く知らなかった。科学作家ジェイムズ・グリックは、新刊『The Information(邦訳:インフォメーション―情報技術の人類史)』の中で、人間の生活の中で情報の役割が拡大していること、そして、新しい技術の速度や量、重要性が増加し続ける理由を実証している。


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(チャールズ・バベッジとジェイムズ・グリック。生き別れの双子?)

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posted by 七左衛門 at 21:27 | 翻訳    

2014年11月30日

「新しいアイデアに反対しない」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Least Resistance to New Ideas" の日本語訳である。



新しいアイデアに反対しない The Least Resistance to New Ideas

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(1850年頃、米国G.F. Nesbitt & Co., printerによる)

何年も前に、サンフランシスコ・クロニクル紙が次のような短いコラムを掲載した。記者がインドを旅行したとき、ニューデリーで滞在したホテルの従業員に、自分はサンフランシスコ・ベイエリアから来た、と言ったところ、従業員は「おお、世界の中心ですね」と答えた。どうしてそう思うのか、と尋ねると、「世界の中心とは、新しいアイデアに反対しない場所のことだから」と言った。

サンフランシスコと未来志向との特別な関係について、これ以上の表現はないだろう。私の経験によれば、次の言明は真実だと思われる。新しいアイデアが湧き出る一人当たりの件数は、現時点では、地球上のどこよりもサンフランシスコ・ベイエリアが多い。

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posted by 七左衛門 at 18:06 | 翻訳    

2014年10月30日

「ビットが欲するもの」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "What Bits Want" の日本語訳である。



ビットが欲するもの What Bits Want

デジタルのビットにも生涯がある。ビットは人間の役に立っているが、人間はビットのことを何も知らない。ビットが本当は何を欲しているのか? 四つの異なるビットの身の上話を紹介しよう。

(A)
最初に登場するビット(ここでは「ビットA」と呼ぶ)は、キヤノン5D Mark IIカメラのセンサーで生まれた。ニューヨークでベビーカーの黒いプラスチックの取っ手をかすめた光線が、カメラのレンズに入って、大きめの切手サイズの小さな板に焦点を結んだ。鈍く虹色に光るその表面には、2100万個の長方形のくぼみがある。ベビーカーのハンドルの白く輝く部分から飛んできた光子は、カメラの中で赤緑青がモザイク状に配置されたフィルターを通過し、赤の画素番号6,724,573の微小な穴に入る。カメラの外で写真家がシャッターボタンを押すと、赤の画素番号6,724,573は、そこに到来した光子の個数を数える。さらに、隣接する緑と青の画素と比較して、とらえた色を計算する。画素番号6,724,573は、15個の新しいビットを生成する。その一つが我らのビットAであり、この画素が純白であることを示すのに一役買っている。

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posted by 七左衛門 at 22:15 | 翻訳    

2014年09月29日

「テクニウムの判定基準」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Technium Test" の日本語訳である。



テクニウムの判定基準 The Technium Test

私たちの小さな青い惑星の他にも、宇宙には千億個以上の銀河があって、それぞれに千億個の太陽があり、それぞれに数え切れないほどの居住可能な惑星がある。宇宙の中で、知覚のある生物が生息して独自の高度な技術を発展させている惑星を、何らかの方法で少なくとも1個、調査することができたとしよう。その惑星で、複雑な物体を発見した場合に、それが生物なのか、それとも創作物なのかを見分ける方法があるだろうか? ある特定の事例について、それが生まれながらの生命体なのか、それとも生命体によって作られた極めて高度な機械なのか、区別できるだろうか? どのような枠組みを使えば、「自然の」進化と、技術による進化とを識別することができるのか? その惑星の起源や最初の生活形を知らない場合に、その惑星における技術と生命体との差異について、何か特別な熱力学的または情報的な手がかりがあるのだろうか? 私としては、そのような判定基準は存在しないと思っている。

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posted by 七左衛門 at 22:37 | 翻訳    

2014年08月21日

「今からでも遅くはない」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "You Are Not Late" の日本語訳である。



今からでも遅くはない You Are Not Late

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1985年、ほぼ何でも好きなドットコムのドメイン名を手に入れることができた時代に、あなたが起業家だったとしたら、どんなにすごいか想像できるだろうか? あらゆる名前が使えるのだ。短い名前でも、カッコイイ名前でも。希望するドメイン名を申請するだけで良い。料金を払う必要もない。このすばらしい状況が何年も続いた。1994年に雑誌ワイアードの記者は、mcdonalds.com が未登録であることに気づいた。そこで、私たちの勧めに従って、その記者が自分でドメイン名を登録して、マクドナルドに譲ろうとした。しかし、同社のインターネットに対する無知ぶりは滑稽なほどで、その話がワイアードの記事になった。その少し前に、私はabc.comが未登録であることを発見したので、ABCの最上階の役員室にいる経営陣に向けて、デジタルの未来に関する講演をしたとき、ここの地下室にこもっている頭の良い計算機オタクに自社のドメイン名を申請させるべきだという話をした。でも、彼らはそうしなかった。

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posted by 七左衛門 at 20:54 | 翻訳    

2014年07月21日

「プラットフォームは商品に優越する」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Platforms Trump Products" の日本語訳である。



プラットフォームは商品に優越する Platforms Trump Products

テクニウム(訳注:文明としての技術)における一般的な傾向として、商品の販売からサービスの販売への長期的な移行がある。ジェフ・ベゾスは、以前から、キンドルは商品ではなくて、読み物へのアクセスを販売するサービスだと言っている。この差異は、もうすぐアマゾンが電子書籍の「読み放題」プランを導入することで、さらに明白になるだろう。読者は、個別の本を購入する必要がなくなる。そのかわりに、ネットフリックスでの映画と同じように、あらゆる本(当初は60万点)を購読する権利を得る。有料会員は、(最終的には)紙の本も入手できるようになる。アマゾン・ブックスは、商品ではなくサービスである。名詞ではなく動詞なのだ。

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アマゾンのKindle Unlimited(キンドル・アンリミテッド)書籍購読サービスのテストページ

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posted by 七左衛門 at 21:24 | 翻訳    

2014年06月23日

「決定的時間」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Decisive Hour" の日本語訳である。



決定的時間 The Decisive Hour

私の経歴は、写真家として始まった。アジアで何年もかけて、スチル写真による「決定的瞬間」を追求していた。光、角度、視点、形、動きなど、あらゆるものが完全に揃う瞬間だ。私がシャッターボタンを押すとき、そのマイクロ秒の間に、すべてが揃っている。そして運が良ければ、露出や焦点も適正になっている(しかし、それは後でフィルムを現像するまでわからない)。

映画やビデオの制作にも少しだけ関わったことがある。カメラが違うし、撮影手法も違う。決定的瞬間のことは忘れて、連続的な流れを追求するのだ。スチルカメラを使っているとき、このまま動画を撮影できたら良いのに、と何度も思った。両方を同時にこなす方法はあるのだろうか?

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posted by 七左衛門 at 22:30 | 翻訳    

2014年05月28日

「工業製品の迷信」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Technological Superstition" の日本語訳である。



工業製品の迷信 Technological Superstition

このハイテクの時代にも、迷信はまだ生き残っている。特に工業製品、その中でも歴史上の遺物のように扱われるものについて、顕著に現れている。最近では、米国での9.11の扱いに、超自然的な迷信がまぎれ込んでいる。

近代的大量生産の特徴は、ある発明について同一の複製品を安価に作成する機械の能力である。それは、生身の職人による不揃いな作品とは違う。鉄の塊を作る方法を考案すれば、工場でそれを何百万個でも作ることができる。まず、タイプライターの試作品を作れば、工場では、そのタイプライターと全く同じ複製品を何千台でも何百万台でも製作できる。

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posted by 七左衛門 at 23:01 | 翻訳    

2014年04月23日

「行動優先原則」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Pro-Actionary Principle" の日本語訳である。



行動優先原則 The Pro-Actionary Principle

新しい技術を試すにあたって、現在一般的に採用されている方法は、「予防原則」である。予防原則にはいくつかの方式があるが、いずれにも共通の特徴がある。その技術が危害を及ぼすものでないことを証明できるまでは、それを受け入れない。安全であることを証明できなければ、それは禁止されるか、または縮小、変更、廃棄、却下される。つまり、新しい思いつきに対する最初の反応は、安全性が確立するまで何もしないということである。技術革新が起こったときには、まず立ち止まる。そして、その次の段階として、オフラインで、あるいは模型を使うなど、危険がなくて安全でリスクの低い方法で試してみる。その技術が問題ないとわかった後で、初めて生活に取り入れるようになる。

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posted by 七左衛門 at 22:28 | 翻訳    

2014年03月10日

「インターネットを信仰する」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Internet Is My Religion" の日本語訳である。



インターネットを信仰する The Internet Is My Religion

実は、私自身の信仰ではなくて(私の宗教観はこんな感じ)、この男の信仰なのだが、この話は多くの人の意見を代弁していると思う。





ジム・ギリアムは、以前はキリスト教の福音派信者だった。2度にわたって癌による死の淵から生還し、情熱的で明確な自分の信念を持っている。今、ジムが信じているのは、人間を信頼すること、神は実在すること、そして「インターネットは自分の宗教である」ということだ。ネットを通じて起こったすばらしい出来事に恩寵と善を見いだして、その真善美の輝きを宗教という言葉で説明している。彼のインターネットに対する信仰の是非は別として、インターネットが地球規模で拡大するにつれて、宗教的な比喩を使いたくなるだろうとは思う。

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posted by 七左衛門 at 21:33 | 翻訳    

2014年01月21日

「跳躍的な技術普及は起こらない」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Why Leapfrogging is Rare" の日本語訳である。



跳躍的な技術普及は起こらない Why Leapfrogging is Rare

2年前に(訳注:原文発表は2008年5月)、私は、跳躍的な技術普及に対する疑念を記事に書いた。新しい環境保護的なデジタル技術が、古くて汚れた技術を跳び越えて普及すれば良いと本当に思っていたのだが、その証拠を見つけられなかった。そこで、The Myth of Leapfrogging(跳躍的な技術普及という神話)を投稿したのだった。その要点は、跳躍的な技術普及の象徴的事例である携帯電話に関する話である。携帯電話は固定電話よりも急速に増加しつつあるが、固定電話自体も今なお増加しているという事実がある。固定電話は、携帯電話の後を追っている。携帯電話が生み出したトラフィック(通信量)を、固定電話が銅の電線に「焼き付けている」とも言える。携帯電話が先行するという意味では、携帯電話は固定電話を跳び越えて発展している。しかし、通常の意味で「跳躍」というと、多くの人が考えるのは、何かを全く行わずに「跳び越える」ことだが、ここでは、そうなっているわけではない。固定電話は消滅していない。

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posted by 七左衛門 at 22:07 | 翻訳    

2013年12月08日

「企業における長期的思考」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Corporate Long-term-ism" の日本語訳である。



企業における長期的思考 Corporate Long-term-ism

最近、IBMが同社の百周年に際して、ニューヨークタイムズとウォールストリートジャーナルに4ページに及ぶ全面広告を掲載した。(訳注:原文発表は2011年7月)その広告は、長期的思考の利点についての的確な解説である。その一部を引用する(太字はケヴィン・ケリーによる)。

私たちの祖父の時代の一流会社は、ほとんど全部がすでに消滅しています。1900年の米国事業法人上位25社のうち、1960年代初頭に同じリストに残っているのは、たった2社だけです。1961年のフォーチュン500の上位25社で、今もその地位にあるのは、6社にすぎません。
(略)

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posted by 七左衛門 at 19:30 | 翻訳    

2013年10月26日

「自己出版という選択」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Self-Publishing Route" の日本語訳である。



自己出版という選択 The Self-Publishing Route

いにしえの『ホールアースカタログ』と同様に、私の新刊『Cool Tools(クールツールズ)』は、自己出版した本である。この本の採算面について、そして既存の出版社を使わなかった三つの理由について説明しようと思う。

第一の利点は、速さである。9月(訳注:2013年)に執筆と編集が終わると、10月にはアマゾンで事前予約が始まった。12月第1週にはアマゾンで(書店でも!)入手可能になる。もしもこの本をニューヨークの出版社から出版していたら、今ごろはまだ契約交渉中で、本が出るのは来年の夏あたりになっていただろう。

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posted by 七左衛門 at 22:19 | 翻訳    

2013年10月22日

「ありえないものを認める」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Believing the Impossible" の日本語訳である。



ありえないものを認める Believing the Impossible

ジョン・ブロックマンは、毎年、自分のウェブサイト「エッジ」で「今年の質問」を主催している。年末になると、知り合いの科学者や思想家たちに質問を投げかける。今年の質問は、私が提案したものだ(訳注:原文発表は2008年1月)。それは「あなたが考え方を変えたことは何か?」という質問である。私はいろいろなものについて考え方を変えた経験があるので、この質問をしてみた。みんなが考え方を変えるに至った経緯と理由について、私は大いに興味がある。この質問に対する165件の回答は、読みごたえがあると思う。一つだけを選ぶのは難しいが、私は最近の事例について書くことにした。「エッジ」への私の回答を再掲する。

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posted by 七左衛門 at 22:43 | 翻訳    

2013年09月04日

「2019年の“想定外”を考える」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "2019 Unthinkables" の日本語訳である。



2019年の“想定外”を考える 2019 Unthinkables

未来学者のハーマン・カーンは、想像力を柔軟にして未来予測をするために、「想定外のことを考える」という方法を取り入れた。みんなが知っていることは正しい、という社会通念がある。それが邪魔をして、たいていの場合、未来をうまく予測することができない。たとえば、素人が百科事典を書いて、その内容をいつでも誰でも変更できるという発想は、ありえないばかげたことだと(私を含めて)みんなが思っていた。そのせいで、ウィキペディアの出現を誰も予測できなかった。私たちが知っていることは間違っていて、想定外のことが起こるかもしれないと考えるべきだ、とハーマン・カーンは強く主張している。

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posted by 七左衛門 at 22:26 | 翻訳    

2013年07月24日

「心にあいた穴」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Making Holes in Our Heart" の日本語訳である。



心にあいた穴 Making Holes in Our Heart

この気持ちはよくわかる。巨大な展示会場を歩き回ると、まぶしい照明の中に電子機器が多数展示されている。新しい機器は、どれも同じに見えるのに、他と違うと主張している。それが世界最大の家電機器展示会CES(Consumer Electronics Show)である。会場は圧倒的な広さだ。すぐに、電子機器を見るのはもうたくさんだと思うようになる。違いのないものばかりで失望する。多数の機器による全体構成が、平凡で無意味に思えてくる。CESを取材したこの記者と同じことを感じ始める。

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posted by 七左衛門 at 19:33 | 翻訳