2010年03月06日

「ゲーム化する生活」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Game-ified Life" の日本語訳である。



ゲーム化する生活  The Game-ified Life

ゲームの将来について、ゲームデザイナーのジェシー・シェルが語るこの講演は、ぜひ視聴すべきだと思う。私が長年聞いてきた中でも、意識改革に最も影響のある講演である。多くの新しい考え方が示されていて、しかもとても速く話が進むので、私はその講演映像をすでに2回見たが、できればもう1度見ようと思っている。これはそういった種類の講演だ。

私がシェルのファンになったのは、"The Art of Game Design"(ゲームデザインの技巧) という本を発見したときである。それはゲームデザインについての最良の本であるだけでなく、複雑なもの全般の設計に関するすばらしい本である。(この本についての私の書評はこちら。)

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posted by 七左衛門 at 14:01 | 翻訳    

2010年02月27日

「20億の目によるインターメディア」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The 2-Billion-Eyed Intermedia" の日本語訳である。



20億の目によるインターメディア  The 2-Billion-Eyed Intermedia

著作権代理人のジョン・ブロックマン(私の著作権代理人でもある)は、毎年、一つの質問に的を絞った仮想サロンを主催している。

今年の質問は「インターネットはあなたの考え方をどのように変えたか?」というものだった。

私の回答は、他の170人の回答とあわせてエッジ(Edge)に掲載されている。

この件については、みんながきわめて多様な意見を述べていて、そこから学ぶことが多い。ある場合には、「ああ、そうだ。これは現実に起こっていることを明確に説明している」と思ったりする。私が気に入っている回答は次のとおり。ダニー・ヒリス (Danny Hillis)、シェリー・タークル (Sherry Turkle)、クレイ・シャーキー (Clay Shirky)、サム・ハリス (Sam Harris)、スチュアート・ブランド (Stewart Brand)、ジョージ・ダイソン (George Dyson)。

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posted by 七左衛門 at 16:57 | 翻訳    

2010年01月30日

「永遠の本」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Forever Book" の日本語訳である。



永遠の本  The Forever Book

サイバネティクスの重要項目の一つは、フォン・ノイマンによる、最も小さな自己複製可能な機械がどのようなものであるかを解明する試みである(彼はこの研究を論文には書かなかったが)。大規模な自己複製可能な機械はたくさんある。すべての生物はそうだ。しかし、自分自身を複製することができる最小のものは何か?その一連の探求から、彼の独創的なオートマトンという発想が出てきた。そして最終的には多くの人工生命の研究が生まれた。最近、生物学者は同じ質問をし始めた。考えられる最小の生物は何か?生命はどこまで小さくなれるか?この一連の考察から、地球外生物学者および生物の起源の研究者たちは、自己複製するRNAの最小単位の実験をしている。その量は地球上で自然に見られるものよりずっと小さい。

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posted by 七左衛門 at 14:53 | 翻訳    

2010年01月10日

「特異点はいつも近い」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Singularity Is Always Near" の日本語訳である。



特異点はいつも近い  The Singularity Is Always Near

計算機とワールドワイドウェブについて、今、私たちは特異点に似た出来事を経験しているような本能的な感覚がある。しかし、この特異点という概念は、進行中の変革を説明するのに最適ではない。

特異点というのは物理学から借用した用語で、ブラックホールの中で状況が激変する分岐点を示すものである。正統的な用法では、物体がある点を越えると、それに関するものは何でも、たとえば情報でさえも抜け出すことができず、ブラックホールの重心に引き込まれる。言い換えれば、物体がブラックホールに入るところは確かであって感知できるが、ひとたびこの不連続点を過ぎると、その物体の未来に関することは何もわからなくなる。無限へ向かう途中のこのような断絶を、特異な出来事 ―― 特異点という。

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posted by 七左衛門 at 16:55 | 翻訳    

2009年12月27日

「科学的手法の革新」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Recent Innovations in the Method" の日本語訳である。



科学的手法の革新  Recent Innovations in the Method

過去50年間の、科学的手法の革新としては何があるだろうか?あなたが今まで生きている間に、科学の性格を変えてしまったものは何か?私は新しい手法を使った発見よりも、科学の手法それ自体の革新に興味がある。

宇宙物理学、生物学、進化論、計算機科学、心理学、空想科学小説などの分野で著名な科学者や科学評論家に対して、この質問を問いかけた。次のような人たちが質問に答えてくれた。

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posted by 七左衛門 at 21:42 | 翻訳    

2009年11月25日

「進化する神の精神」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Evolutionary Mind of God" の日本語訳である。



進化する神の精神  The Evolutionary Mind of God

神について人間が作成した記述で、矛盾のないものは存在しない。人間が思いつく程度の神の定義は、必ず複数の無限を必要とする。たとえば全能、全知、あるいは永遠の存在というように。しかし、ある存在が「すべての方向に無限」であるとき、その無限性は交錯し、互いに矛盾するようになる。子どものなぞなぞで、神様は自分で持ち上げられないほど石を重くすることができるか、というものがある。これは無限性が相互に対抗するときに、無限の能力が混乱することを示す単純な事例である。

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posted by 七左衛門 at 22:35 | 翻訳    

2009年10月21日

「2100年までに精神的ロボットは人類にとってかわるだろうか?」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Will Spiritual Robots Replace Humanity by 2100?" の日本語訳である。



2100年までに精神的ロボットは人類にとってかわるだろうか?
  Will Spiritual Robots Replace Humanity by 2100?


2000年4月にダグラス・ホフスタッター(『ゲーデル・エッシャー・バッハ』の著者)が「2100年までに精神的ロボットは人類にとってかわるだろうか?」という問題についての討論会をスタンフォード大学で開催した。参加者には、ビル・ジョイ、レイ・カーツワイル、ハンス・モラベック、ジョン・ホランド、そして私などがいた。問題は重大なものだった。

私は、問題を構成する一つ一つの言葉を分析して、問題に答えることにした。

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posted by 七左衛門 at 21:47 | 翻訳    

2009年10月04日

「技術の意義に関する私の探求」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "My Search for the Meaning of Tech" の日本語訳である。



技術の意義に関する私の探求  My Search for the Meaning of Tech

私は今までの人生の大部分で、ほとんど物を所有しなかった。30歳まで私は放浪者だった。安いスニーカーと破れたジーンズを身につけて、アジアの辺境を歩き回っていた。私がよく知っている都市は、中世的豊かさで満ちていた。土地には農業による緑があった。そのころ私が何かを触ると、それはほぼ確実に木か繊維か石でできていた。手を使って食事をし、山あいの谷を通って足で歩き、どんな場所ででも寝た。ほとんどお金を持たず、品物はなおさら少なかった。個人的所有物は、寝袋といくつかのカメラがすべてだった。

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posted by 七左衛門 at 14:26 | 翻訳    

2009年09月21日

「人類は技術の生殖器官である」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Humans Are the Sex Organs of Technology" の日本語訳である。



人類は技術の生殖器官である  Humans Are the Sex Organs of Technology

技術には独自の計略があると私は考えている。技術全体が、すなわち私の用語では「テクニウム」が、自立的であるという証拠は何か?というのは、自立的でないものが独自の計略を持つことはあり得ないはずだからである。私の解答は、三部構成になっている。

まず第一に、あるシステムが生存し続けるために他のシステムに依存しているとしても、そのシステムは計略を持ちうると私は思う。人間の知性と人間の文化を考えてみよう。当然ながら、人間は動物であり、単なる進化の産物である。ほ乳類として、生物学の法則に従わなければならない。人間は、生体組織としての方向性に組み込まれている。私たちの肉体は呼吸し、新陳代謝し、交尾し、排泄し、最後に死ぬ。人間の身体の行動計画は、他の動物の身体と全く同じである。

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posted by 七左衛門 at 13:08 | 翻訳    

2009年09月13日

「進化が進化する手段としての技術」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Technology, or the Evolution of Evolution" の日本語訳である。



進化が進化する手段としての技術  Technology, or the Evolution of Evolution

技術を考えるとき、私たちは配管やら点滅する表示灯やらが目に浮かぶ。しかし宇宙の観点で見ると、技術とは加速する進化である。

概念上は、自然の進化とは、可能性の空間を探求することである。すなわち、適応システム ――この場合には生命―― が、あらゆる可能な形態の中から、生き残るための新しい形態を探索する方法である。その適応システムは、この形態やらあの形態やらを試してみる。丸いものや長いもの、遅いものや速いもの、足があるものや翼があるもの、など。探索という競技を継続できるような、いろいろな構造を用意する。そこで見つけられる形態のほとんどは、ごく短時間しか生き延びられない。しかし長い年月を過ぎると、生命というシステムは、非常に安定な形態に落ち着く。地球上での安定な形態とは、管状の腸であり、植物の葉であり、左右対称の形である。その形態のおかげで、生物はさらに多くの形態を探索し続けることができる。生物が「発見した」自然の進化はいずれも、より多くの革新を発見するための基盤となっている。この過程で、生命は生存形態の種類と、進化を持続する能力を拡大している。

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posted by 七左衛門 at 16:43 | 翻訳    

2009年08月27日

「ある方向へ無限に」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Infinite In Some Directions" の日本語訳である。



ある方向へ無限に  Infinite In Some Directions

私たちはどこへ向かっているのだろう?技術はどこへ行こうとしているのだろう?

不確かな行動について、将来への延長線上で推定して判断することがよくある。ある現象がそのまま継続するならば、それはどこへ通じるのか?農場で抗生物質を日常的に使っていたら、100年後にはどうなるのか?みんなが携帯電話を絶え間なく使い続けていたら、500年後には社会はどこへ向かうのか?テクニウム(訳注:文明としての技術)が今の状態でさらに千年続いたとしたら、それは私たちの望んでいる世界になっているのかどうか?そもそもテクニウムは、このままの状態であと千年続くことができるのか?

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posted by 七左衛門 at 22:44 | 翻訳    

2009年08月10日

「技術に満足できない理由」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Why Technology Can't Fulfill" の日本語訳である。



技術に満足できない理由  Why Technology Can't Fulfill

ネット上で知り合ったアーミッシュの男が、この夏の初め頃、自転車に乗って霧の太平洋岸を通って私の家にやって来た。もちろん、ネット上でアーミッシュと知り合いになるなんて、まず考えられないだろう。しかし、その男は私のブログを通じて私に連絡してきたのだ。そして何ヶ月か後に、私の家の戸口に現れた。セコイヤの木の下にある私の家まで長い坂を登って来て、暑くて汗まみれで息を切らせていた。そばにはダホンの精巧な折りたたみ自転車が止めてあった。鉄道の駅からそれに乗って来たのだ。多くのアーミッシュと同様に、彼は飛行機には乗らない。だからペンシルベニアから3日がかりで大陸横断列車に自転車を積んでやってきたのだ。彼がこのあたりに来るのは、今回が初めてではなかった。前回にはカリフォルニアの海岸をすべて自転車で走り、また列車や船から、実際にいろいろな社会を見てきたのだった。

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posted by 七左衛門 at 15:22 | 翻訳    

2009年07月07日

「デフォルトの勝利」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Triumph of the Default" の日本語訳である。



デフォルトの勝利  Triumph of the Default

現代の生活において、重要なのに真価を認められていないものの一つが、デフォルトである。「デフォルト」とは、もともと1960年代に計算機科学で既定の標準値を表すのに使われた技術的概念である。デフォルトという言葉は、たとえば、このように使う。「このプログラムのデフォルトでは、年月日の年は4桁ではなく2桁の数字で示すものとする。」今日ではデフォルトという概念は、計算機科学の枠を越えて文化全体に広がっている。些細なことのようにも見えるが、このデフォルトという考え方は、テクニウム(文明としての技術)にとって基本的なものである。

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posted by 七左衛門 at 21:54 | 翻訳    

2009年06月18日

「進歩の証拠」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "The Evidence of Progress" の日本語訳である。



進歩の証拠  The Evidence of Progress

分別のある人なら、この地球上に山ほどある害悪を無視することはできないだろう。環境、不公平、戦争、貧困、無知などの害悪、そして、何十億もの住民の身体と精神の不健康も、逃れることができないものだ。また、理性のある人なら、人間の発明や活動によって絶え間なく生じる新しい害悪を見過ごすことはできない。なお、そこには古い害悪を治すための善意による行為で生じる害悪も含まれている。善良な物や人を破滅させることも、絶え間なく続いているように思われるし、実際にそうである。

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posted by 七左衛門 at 22:20 | 翻訳    

2009年06月07日

「技術の欲望」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "What Technology Wants" の日本語訳である。



技術の欲望  What Technology Wants

犬は外に出たがる。猫はひっかいてもらいたがる。鳥は仲間を求める。ミミズは湿気を求める。バクテリアは餌を求める。

顕微鏡で見るような単細胞生物の欲望は、あなたや私の欲望と比べれば小さいけれども、すべての生物は共通していくつかの基本的な欲望を持っている。生き延びるために、そして成長するために。原生動物の欲望は無意識的であり不明瞭であって、本能あるいは傾向のようなものである。バクテリアはその必要性を自覚していなくても、栄養物に向かって動いて行こうとする。バクテリアの細胞膜の内側に、私たちが知っているような意志が存在する空間はないが、それでも何かよくわからない方法によって、別の方向ではなくその方向に進むことを選択して、自分の欲求を満たしている。

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posted by 七左衛門 at 21:52 | 翻訳    

2009年05月26日

「インターネットはどれだけの電力を消費するか?」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "How Much Power Does the Internet Consume?" の日本語訳である。



インターネットはどれだけの電力を消費するか?  How Much Power Does the Internet Consume?

私は、ウェブおよびその基盤となるインターネット全体が一つの大きなマシンだと思っている。人間が作ったこの装置は、現存する機械のうちで空間的に最も大きなものである。また、それは今までに人間が作った機械の中で最も複雑なものである。そして、私たちが知っている中で最も信頼性の高い機械である。他にも多くの特質があるが、私たちはそれが一つのマシンだとは思っていないので、あまり目に見えない。

この「一つのマシン」を明示するために、私はその基本的な規模を解明しようとしてきた。世界中のウェブ全体で、コンピューター・チップが何個使われているか?世界全体を合わせると、その計算能力、記憶容量、通信容量はどれだけのものか?

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posted by 七左衛門 at 21:39 | 翻訳    

2009年05月20日

「文学空間とサイバー空間」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Literature-Space Vs. Cyberspace" の日本語訳である。



文学空間とサイバー空間  Literature-Space Vs. Cyberspace

この記事は、ウェブで文章を読むことについての議論の応酬の一つである。エッジエンサイクロペディア・ブリタニカが実施したフォーラムのほかに、ニューヨーク・タイムズがオンラインで読むことの意義についての長い記事を掲載して、議論に参入してきた。この問題は、新しい技術に関する他の多くの問題の判断材料となるカナリヤみたいなものだと私は思う。これは本当に新しいものなのか、そして、もしそうならば従来とどう違うのか?

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posted by 七左衛門 at 21:15 | 翻訳    

2009年05月01日

「新しい種類の知性」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "A New Kind of Mind" の日本語訳である。



新しい種類の知性  A New Kind of Mind

毎年、ジョン・ブロックマン(私の著作権代理人であり友人でもある)は科学者の友人や顧客たちに「大問題」を問いかけている。今年の質問は「世の中のあり方が変わるほどの科学的知見または研究開発成果として、あなたの存命中に出現すると思われるものは何か?」であった。 私の回答を以下に示しておくが、ジョン・ブロックマンの「2009年エッジの質問」サイト(2009 Edge Question)に行って、他の50件ほどの投稿も読んで欲しい。とても興味深いものが多い。特にダニー・ヒリスの回答は、私の回答と共通するものがあって気に入っている。

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posted by 七左衛門 at 21:54 | 翻訳    

2009年04月22日

「柔軟性を拡大する」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Expanding Flexibility" の日本語訳である。



柔軟性を拡大する  Expanding Flexibility

生命がなければ柔軟性は存在しない。生命がない原始時代の世界は硬直している。

この惑星から生命そのものが消滅したとすれば ――"The World Without Us"(邦訳「人類が消えた世界」)という本のように人類だけではなく―― すべての生命が突然消えてしまったら、人間の創作物の残骸は硬直し、そして崩壊する。何年もの間、私たちの都市の地盤はしっかりとしているだろう。高層ビルは空に届き、郊外の住宅地は見渡す限り広がる。だが間もなく、まず最初に、酸素が豊富な生物世界の大気によって、金属やプラスチック、そして有機物が腐食し始める。生命体にしても人工物にしても、柔軟性、適応性、屈曲性、密閉性があるものは何でも、そのまま放置されると硬くなる材料でできている。ゴムは空気中でもろくなる。封止剤は腐朽して漏れるようになる。鉄は錆びて膨張する。たいていの金属は酸化して剥落する。金などのわずかな物質だけが、時の経過によっても変化せずに残る。しかしこのような金属はごく限られた柔軟性しか持たない。

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posted by 七左衛門 at 21:40 | 翻訳    

2009年04月15日

「技術を衰退させるべき理由」

著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly )
訳 :堺屋七左衛門


この文章は Kevin Kelly による "Reasons to Diminish Technology" の日本語訳である。



技術を衰退させるべき理由  Reasons to Diminish Technology

私は、人間の道義的責任として、技術の能力や存在感を増大させるべきだと確信している。しかし、控え目に言うと、あらゆる人がそう考えるわけではない。多くの人はその逆、すなわち技術の能力や存在感を減少させる道義的責任があると考えている。私はこの問題に関する論拠を収集して、十分に理解しておきたいと思っている。そしてこの議論にできるだけうまく立ち向かえるようにするのだ。技術を衰退させるべきだという正当な理由だけでなく、根拠のない理由にも興味がある。テクニウム(文明としての技術)に関するみんなの考え方、正しくないかもしれないがみんなをそう思わせる理由だ。とりあえずのまとめを以下に示しておく。私が気づいていない理由が他にあれば、コメントで教えてほしい。

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posted by 七左衛門 at 21:55 | 翻訳